長距離通勤の社員です。通勤中のできごとです。
いつもの様に会社の帰り道、東横線から副都心線に乗り入れる電車に乗る。
運よく座ることができた自分は、外の寒さから解放されたためか、すぐに居眠り。
乗客の出入りが多い渋谷駅では、80才ぐらいの爺さんが自分の右隣に座ろうとしている。
動きが鈍い。年齢も年齢だからそんなもんだろう。
薄眼で見ている。
踏まれては困ると思い、つかさず、はみ出していた自分のコ―トの裾を引き寄せる。
そして、また、居眠り。
新宿三丁目あたりだろうか、隣に座った爺さんの鼻水をすする音が煩く目が覚めた。
ズルズル、ズッツー。なんとも粘りがあり勢いがある音だ。
鼻水をすするのだけは動きは鈍くない。非常に機敏だ。
いい加減に、そのすすり音、何とかしてしてくれよ、と、思っていたところ、
爺さんはおもむろにコートのポケットに手をつっこみ、ゴソゴソ。
自分の右太ももあたりでゴソゴソ。ズルズルの後はゴソゴソかよー! やめてくれー!
何やら何かを探しているらしい。目は電車の蛍光灯を焦点が合わない様に見ている。
意識を手先に集中させてしまうと鼻先には意識できないのだろうか、鼻水が垂れないための様だ。
薄眼で見ている。
しばらく探すと、縮れたティシュぺーパーが出てきた。
爺さんは、縮れを延ばすこともなくそのまま鼻をかむ。チ―ン、チチ―ン。
縮れているので鼻水がはみ出しそうだ。いや、間違いなく出ている。
薄眼で見ている。
やっと、これで静かになる。まだ池袋の手前だ。もう少し寝よう。
爺さんは、使ったティシュペーパーをコートのポケットにねじり込もうとしている様だ。
自分の右太ももがまた、モソモソする。
まー、これで、終わりなのだから仕方がないかー。我慢。
・・・・・
・・・・・
自宅がある志木駅に到着、電車から降りる。
外は寒い。コートに入れたあったポケットから手袋を出そうとすると、
何やら怪しい感触が・・・・・・・・・ネッチョリ。
出して見ると、縮れたティッシュペーパー。
あの爺さんのティシュペーパーだ!!
手には爺さんの鼻水が・・・・・。
ホームにある水飲み場の水は非常に冷たかった。
執筆者
T,I