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-第1話- 「新築?リフォーム?どっちが良いの?!」

2017年12月11日 更新

-第1話- 「新築?リフォーム?どっちが良いの?!」

ただいま!
休日まで、お仕事ご苦労様。で、また何かやらかした?
違いますよー。今日は事務所の先輩の物件の現場見学に行ってきたの。それより、何を読んでいるの?
今月号の新建築(※1)。世界的に有名な競技場をデザインした建築家が取り組んだ、新しい家が特集されているんだ。見てみてよ、この外観。どう思う?
羨ましい!うちもこんな感じにデザインしてくれないかなぁ。
外観は、木で見た目にも柔らかい雰囲気を表現しつつも、対して内部空間は堅牢なRC造なんだ。個人的にとても好きな意匠だよ。今回は木にRCの引き立て役になってもらった感じかな。
出た!廣のRC贔屓。かわいくないんだから。あ、お母さんただいまー。
お帰り、由比。どうだった?
うん、ハウスメーカーさんの2×4工法による分譲住宅だったんだけど、外装も内装もスタイリッシュでオシャレですごくよかったよ。2階建てで、一部の部屋が張り出してたり、大きな吹き抜けがあったりして、大きくないけど、空間の使い方が上手で面積以上の広さを感じたの。ちょうどお隣さんの西沢さんの家みたいな感じ!私もあんな家に住みたいなぁー。
2×4は輸入品じゃない。僕は鉄骨やRCを使った大空間の方が惹かれるけどね。
まーたまた可愛くないこと言う!それを言ったら、ヨーロッパ起源の鉄骨やRCもそうじゃない。最近は木造による大空間の表現も出てきているのよ。それより、さっきから大きな音が聞こえてくるけど、お父さん?
そうそう!昨日に続いて今日も家が悲鳴上げちゃって。今日は洗面台。下の収納が水浸しになっちゃって、母さんパニックだったわ。
なんか最近、頻繁にあるよね。うちもそろそろリフォームしなきゃかなぁ。あ、お父さん!
ふーなんとか水漏れは納まったよ、母さん。応急処置だから、すぐ業者に来てもらわないといけないけどな。お、由比、お帰り。
ただいま。もう大丈夫?この家。最近、所々ガタが来てる気がするけど。
そろそろリフォームを考えないとな。とはいえ、日本でリフォームしても・・・
リフォームするなら、私はアトリエが欲しいわ。イーゼルを立てたり、大きなキャンパスで絵を描きたいわ。
私は大きなクローゼットが欲しい!
僕は書庫。
私は書斎。って、いやいや、少し待ちなさい。リフォームする価値があるかどうか、考えないと。
リフォームする価値?あるに決まってるんじゃないの。そういえば、この家って築何年なの?
お父さんのお父さんが建てたからもう40年以上前だ。
ってことは、もうこの家の価値はゼロに等しいんだね。なーんか残念。
価値がゼロ?どうして?
日本の場合、20年ほどで家の価値はゼロになってしまうの。減価償却のせいだって聞くけど、それが世の中の常識になってしまって。
姉さんも周りに流されがちだしね。今日見てきたからか、すっかり2×4の虜だし。
またまたまた、かわいくない!
由比の言う通り、会計上の減価償却が20年程度というのが根拠なんだ。これは俗に、「消えた500兆円問題」と言われている。
ほらね。
ふん。
住宅の維持に掛けるお金を住宅投資というのだけれど、住宅投資総累計額が900兆円くらいに対して、住宅資産額は400兆円程度なんだ。(※2)」
その差は500兆円。だから500兆円問題なのね。つまり日本では、投資が価値として反映されていない印象を受けるのよね。
海外は逆な感じがするわ。昔、美術研修で海外に行ったとき、現地の住宅を見たけれど、とても手入れが行き届いていて、自分の家に愛着を持っている印象を受けたもの!
そう。日本と異なって、海外ではメンテナンスすることで住宅価値があがることが常識として根付いているから、住宅資産額が住宅投資総累計額を上回っているんだ。
そうすると、リフォームしても将来的にはいいことなしかぁ・・・おっきなクローゼット、欲しかったなぁ。
一概にそうは言えないけれど、日本における住宅は、資産という面では価値が下がるから、リフォームやメンテナンスする場合は、損益分岐点を考えてどちらかを選択しないと意味がない。それに、この家が建ったのは、新耐震基準以前の旧耐震基準の家だから、リフォームするよりも新築する方が、地震に対して安全という考え方もある。
書庫・・・新築するほど、うちにはお金なさそうだしなぁ。僕も国立大に行けと言われてるくらいだし。
まあ、それはだな・・・。
何みんなして落ち込んじゃってるのよ。それなら答えは出てるじゃない。いっそのこと新しい家建てちゃいましょうよ。ね、お父さん?
だから、お母さん、さっきの話聞いてた?リフォームしてもね、住宅の・・・え?お母さん?新しい家?建てる?
あ、それ賛成
・・・ばたん
あーお父さん!白目向いて倒れちゃったじゃん!!

どうするのよ、お母さん!!

(※1)1925年8月創刊。日本を代表する建築専門誌。

http://www.japan-architect.co.jp/jp/

(※2)国土交通省 中古住宅の流通促進・活用に関する研究会資料に基づく

http://www.mlit.go.jp/common/001002572.pdf

 

 

 

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