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-第2話- 「モジュール?グリッド?間取り決めるのって面白い!」

2017年12月27日 更新

-第2話-「モジュール?グリッド?間取り決めるのって面白い!」

……あいたたた。……あれ?どうしてソファに寝転んでいるんだろう。
あ、やっと気がついた、お父さん!大丈夫?!
びっくりしたわよ。話をしていたら、いきなり白目を剥いて倒れてしまうんですもの。
 ……いや、それ母さんのせいだから
……段々思い出してきたよ。確か、由比が帰ってきて、住宅資産やリフォームの話をしていて、母さんが何か突拍子もないことを言ったところまでは覚えているのだけど……って、みんなそれぞれ、何を描いているの?
善は急げ!って言うじゃない?!早速、みんなで自分の理想の間取りを考えているのよ。お父さんも早く描いてね。
……。やっぱりまだ悪夢は続いているのだね。
あなた、何か言った?
いや、何でもない。でも、いきなり間取りって、建築や設計に関して何も知識がないけど進めてしまって大丈夫かい。
こういうのは、思いついたら忘れないうちに描いてしまうのが良いのよ。ほら、こんなのどうかな。題して、女の子みんなの憧れ、巨大ドレスアップルーム!
ウォークインクローゼット大きすぎでしょ。
いいんです。あんたの本棚も2階まで伸びてるじゃない!そんなの無理じゃない?!
この間観た映画にあったんだ。梯子を使って本を取りにいって、梯子に腰掛けながら本を読む。考えるだけで憧れちゃうよ。
まったくどっちがミーハーなのよ。お母さんはどんな間取り?って、すでに家の要素が無くて、ギャラリーとアトリエだけなんですけど。
もちろん。創作活動はストイックなのよ。他の要素はいらないの!
こらこら、待ちなさい。好き勝手やるのは良いが、きちんと建築や設計のルールに則らないとだめだよ。
もちろんよ。できたら設計のプロに意見をもらえば良いでしょう?あなた、工務店に知り合いの方がいらっしゃったでしょう?どなたでしたっけ?
ああ、隆正ね。塚本隆正。今度、みんなの書いたプランを見てもらうことにしよう。

 次の日、友人の隆正に電話する父。

隆正
やあ、久しぶりだね、研吾。でも、一体どういう風の吹き回しだい?ついこの間までは中古住宅をリフォームしようか、なんて言ってたけど、いきなり新築なんて。
まあ、なんだその、話せば長くなるんだが……。
隆正
ま、大方、檀さんの鶴の一声にすべて持って行かれたってとこだろう(笑)
そう言ってくれるな。それより、プラン見てくれたのか。
隆正
メールで送ってくれたものだね。もちろん見たよ。みんな個性が出てるね(笑)。でも、これだと、図面にするには程遠いね。研吾、モジュールって知ってるか
何かを構成するときに用いる最少単位のことかい?
隆正
そうだね。建物を設計するときの、特に木造に関しては基本単位として良く使われている言葉だよ
それがどうかしたのか?
隆正
電話じゃなんだし、みんなの前で絵を使って話した方が良いだろうから、今度、研吾の家に行くよ

11月のとある休日ー。

隆正
こんにちは
いっらしゃいませー!お待ちしてました。隆正さん、久しぶりです。プラン見てくれました?
隆正
久しぶり。由比ちゃんのプラン、女子力高かったね(笑)。あのプラン嫌いじゃないよ。あ、檀さん、こんにちは。お元気そうですね。
いつも旦那がお世話になってます。旦那がどうしても新築を建てたいって言うものだから、久しぶりにテンション上がって寝る間を惜しんでプランを考えちゃったわ。
隆正
そうだったんですね、アハハ(苦笑)
世間話はいいから、早速始めてよ、おじさん
隆正
廣君は相変わらず手強いなぁ。いいよ、さっそく始めよう。みんなにはまず、設計の基本要素であるモジュールとグリッドを理解して欲しいんだ。モジュールというのは、建物の間取りを考えること、これをプランニングというのだけれど、その基本単位なんだ。要は、周りの空間の広さやモノの大きさを把握しやすくする目安と考えてくれれば良い。日本には昔から、起きて3尺、寝て1畳という言葉があったように、畳1枚の大きさ=1畳が部屋の大きさを示す尺度になっていたんだ。聞いたことあるだろう?
私の部屋は6畳よ。
隆正
そう、それだ。かの有名な建築家、ル・コルビュジエも、「モジュロール」という、人の身体の寸法を黄金比で分割して、空間と部品との関係を体系化する試みを行っていたんだ(図1参照)。こうすることで、身体を使って様々な空間の広さや、モノの大きさを把握することができる。生活と人間が密接に結びついているんだ
                    

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図1_モジュロール

そのモジュールが、今度うちで建てる木造ではどうなるの?
隆正
鋭いね。木造では910モジュールと呼ばれる、910mmを基本単位に採用している。各部屋のサイズやモノの大きさは910mmの倍数で考えられるのが一般的だ。視覚的に分かりやすくするために、今日は方眼紙を持ってきたからこれで説明しよう。方眼紙の1マスを910mmとすると、1マスが基本単位の1モジュール、そして、モジュールの境界に引いた線がグリッドなんだ。(図2参照)。あとは部屋のサイズや、モノを、このモジュールを使って考えていけば良いんだ。例えば、トイレの広さは910×1820としたり、キッチンの幅を2730としたり(図3参照)。もちろん、必ずしも910の倍数である必要はない。それに、実際のキッチンの寸法が正確にこの数値ではないし、あくまで、プランニングする際の目安だね。自分の好きな寸法で長さは決めても構わないよ
ってことは、私の部屋は、6畳だから、2730*3640ね。あ、隆正おじさん、書いてもいい?今の家の居間は3640*3640。8畳ね!こんな感じかな?(図3参照)

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図2_モジュールとグリッド

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図3_部屋要素のモジュール化

隆正
その通り。こうやって、空間をデザインしていくことがプランニングの楽しみでもあり、難しいところでもある。実際に、平屋のプランを持ってきたよ。こんな風に、他の部屋も考えると、家になるんだ(図4参照)

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図4_プランニング例

なんか、いきなり夢のない話になったわね
隆正
奥さん、そう言わない。今の話は、あくまで初めて間取りを考える人が設計をしやすくするためのアドバイスなんです。メーターモジュールを使って設計してもいいですよ!大丈夫、夢の詰まった設計というのは、モジュールによらないから!
そうだよ、お母さん。なるほどね。こうやって考えていけばいいのね!!確かに自由気ままに考えているより、少し制約があった方が面白いかも
隆正
だろう?みんな忘れているかもしれないけれど、プランニングの前に、もっと大きな制約があることを忘れてないかな?
えっと……お金?
ゲホゲホッ!!確かにそれはそうだけど。敷地の事だろう?それはまた今度にしよう
隆正
そうだな(笑)。では、これを元に自分のプランを描き直してごらん。設計はそれからだよ
どんなゲームもルールがあるからこそ、そのルール内でどうにかしようと頭を働かせて、楽しむものだしね。では、僕はみんなのプランをまとめ役にならないとね
隆正
またぶっ倒れないでくれよな(笑)

-第3話-「軸組?ツーバイ?どっちが良いの?(仮)」へ続く。

 

 

 

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