トップページ > スタッフブログ > 米松が無い!

米松が無い!

2023年11月15日 更新

現在 木材供給メーカーの火災事故による米松の供給が不足している状態です。(今年の12月ころには70%程度の供給回復を目指しているとのことです)

以前からコロナ禍の影響から木材の高騰、供給不足のウッドショックの影響により現場での使用樹種の制限、ロシア・ウクライナ危機でロシアからのダフリカカラマツの挽板の禁輸によるLVL不足などがあり、現在もいまだ以前のレベルまで改善していない状況が続いていると思います。(国産カラマツによるLVLの供給が始まったようです)

また、円安の影響もあり、杉などの国産材の注目も集まっています。

 

これから設計、施工計画、構造計画を始める物件は部材の流通動向を考慮して計画を始めれば問題ありませんが、着工間際に樹種の変更をしなくてはならない、なども起こりえることと思います。

 

「以前構造計算をしてもらった物件ですが、梁の樹種を変えてもいいですか?」

 

そういう問い合わせもたまにあります。

そのお問い合わせに対して、以下のようにご案内しています。

「構造計算で使用されている樹種の同等耐力以上の樹種への変更は基本的に問題ありません。構造審査を行っている申請の場合の変更手続きは軽微変更で処理できると思います。弱い材への変更は再検討を要し、計画変更となると思います。申請手続きの処理方法は審査機関さんにご相談していただいたほうが確実だと思います。」

とはいえ、樹種変更ができるのかどうかの当たりを付けたいだけで、とりあえず追加検討費用もまだかけたくない段階、という方もいらっしゃると思います。

 

「自分でもチェックできないだろうか?」

 

できます。

各樹種の基準強度がわかれば同等耐力の梁断面を算出できます。

※強い樹種への変更の場合は、同一断面とすれば算出するまでもなく安全側の変更となります。

※樹種の強度等はネットで調べられます。

※関数電卓がないと厳しいです。スマホの無料アプリもあります。(3乗根の計算が必要)

 

「構造計算では、梁の何を検討していますか?」

 

梁は以下の検討をしています。

・せん断力の検討

・曲げの検討

・たわみの検討

 

「同等耐力の断面をどうやって算出しますか?」

 

前出の3つの検討に利用している断面性能を比較し、等価断面を算出できます。

・せん断力の検討 1.5×Q / A ≦ fs → Q ≦ A×fs / 1.5

※Q:梁にかかるせん断力、A:梁の断面積、fs:樹種のせん断耐力

  A×fs を梁の断面性能として扱います。

 変更前の梁の断面性能を A0×fs0とします。樹種変更する梁の断面性能を A1×fs1とします。

等価断面A1 = A0×fs0 / fs1となります。

梁幅を同じサイズとする場合の等価断面の梁成は h1 = h0×fs0 / fs1 となります。

 

・曲げの検討 M / Z ≦ fb  → M ≦ Z×fb

  ※M:梁にかかる曲げモーメント、Z:梁の断面係数、fb:樹種の曲げ耐力

  ※Z = b×h2 / 6

 Z×fbを梁の断面性能として扱います。

 変更前の梁の断面性能を Z0×fb0とします。

樹種変更する梁の断面性能を Z1×fb1とします。

等価断面係数Z1 = Z0×fb0 / fb1となります。

b1×h22 = b0×h02×fb0 / fb1

梁幅を同じサイズとする場合の等価断面の梁成は h2 = h0×√(fb0 / fb1) となります。

 

・たわみの検討 C / (E×I) ≦ δ  → C / δ ≦ E×I

  ※C:たわみ検討の係数や荷重等(同条件比較検討のため同一値となるため省略化)、

E:梁のヤング係数、I:梁の断面二次モーメント、δ:たわみ量制限値

  ※I = b×h3 / 12

 E×Iを梁の断面性能として扱います。

 変更前の梁の断面性能を E0×I0とします。

樹種変更する梁の断面性能を E1×I1とします。

等価断面二次モーメントI1 = I0×E0 / E1となります。

b1×h33 = b0×h03×E0 / E1

梁幅を同じサイズとする場合の等価断面の梁成は h3 = h0× (E0 / E1)1/3 となります。

 

以上の3つの検討で算出された等価断面の梁成 h1h2h3 の最大値以上の梁成サイズを選択すれば安全側の変更となります。

 

「具体例でやってみてほしい」

 

わかりました。具体的に米松から杉への変更のケースで算出してみます。

米松(無等級材)105×150 を 杉(無等級材)での等価断面を算出してみます。

梁幅は同じ105の変更で考えてみます。

各樹種の基準強度(N/mm2

 米松:fs = 2.4、fb = 28.2、E = 10000

 杉 :fs = 1.8、fb = 22.2、E =  7000

せん断による等価断面 h1 = h0×fs0 / fs1 = 150×2.4/1.8 = 200

曲げによる等価断面   h2 = h0×√(fb0 / fb1) = 150×√(28.2/22.2) = 169.05

たわみによる等価断面 h3 = h0× (E0 / E1)1/3 = 150×(10000/7000)1/3 = 168.93

hmax = 200 → 杉105×210

以上より 米松105×150を杉105×210への変更は同等耐力以上の変更となります。

※めり込み耐力は考慮していません。

 

「この方法で算出して変更をすれば、弱い樹種への変更も軽微変更でいけますか?」

 

確かにこの方法なら構造計算ソフトを介さず安全側変更の部材を算出できますが、弱い耐力の樹種変更なので計画変更となる可能性があります。

審査機関さんに相談してみてください。

 

 

樹種変更による部材サイズの当たりを付ける方法として紹介しました。

参考になりましたでしょうか。

 

 

 

執筆者 S.K.

 

 

 

スタッフブログの更新状況もメルマガからお知らせします!
1分で読める構造計算相談所メルマガはこちらからご登録をお願いします。

メールマガジン登録

 

cta1 cta2 cta3
ページの先頭へ