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工作物(擁壁)


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 住宅にまつわる各種構造について、実設計に近い視点で各法令の中身にコメントを加えてきた用語開設コーナーですが、今回は少し目線を変えて、敷地についての話です。

 

 住宅の建設される土地を宅地と呼んでいるわけです。この宅地を保護するため、構造耐力を考慮するように述べているのが法19条(敷地の衛生及び安全)であり、さらに宅地造成法になります。

 

 構造計算相談所には建物の設計とともに、宅地を守る擁壁の設計も相談依頼されます。施行令第138条(工作物の指定)では、様々な工作物の指定がありますが、2mを超える擁壁が工作物申請の対象と指定されています。なかには地盤面の高低差が、2000㎜を超えないように設計し、任意設置の土留めであるとか、基礎の延長で土留めをつくってしまうケースもあるようです。限られた敷地の活用は、住まい手にも重要なテーマですので、安易に批判すべきではないと考えます。しかし、手続きの緩和と構築物に対する設計緩和は一緒ではありませんよね。宅地の安定性をどのように確保するかを無視はできません。

 

 

 そこで、建物を守るための工作物たちが、どんな設計をされているのか少しご紹介します。今回は138条_工作物の中でもよく関係する、”擁壁”に絞っていくつか説明をさせて頂きます(ここでは鉄筋コンクリート擁壁を想定しています)。具体的な擁壁についての技術規定は、令142条と関連法によりますが、まずは以下の点は特に注意してください。(2015年版 構造関係技術基準解説書より)

 

① 擁壁の高さは壁直下の地盤面から、最上部までの高さが基本ですから2mの高低差に目が行きがちです。 しかし、のり面(傾斜面)が続いていく場合は、敷地の安全確認が優先されます。そのため、行政ごとにがけ条例を制定し、がけとして安全性を検討する必要が生じます。

 

② 既存で擁壁が存在する場合は、状況調査や観察が必要です。その擁壁はどのような条件敷設されたのか調べてください。

 

③ 土圧は常時水平力がかかる構造物です。あとからなくなるかもしれない重量で安定を確保すると、安定性を揺るがすことにもなりかねません。

 

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 さて、具体的にどんな構造計算がなされるのでしょうか。

 

 まずは、”土圧”です。土質の種類、高低差、水の有無によって、土が擁壁の壁を押す力を決める必要があります。土圧係数という数値を算出するために、土質を表す諸数値を算入するわけです。内部摩擦角、土の単位体積重量、上載荷重などになります。

 

 

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 擁壁が土から押される力が出たら、滑らないように押しとどめる力と比べます(滑動の検討)。土からの力は、擁壁に寄りかかります。擁壁はつま先や底盤で支持しようと踏ん張ります。この時に底盤下の地盤に必要な支持力があるか検討します(支持力の検討)。もちろん、上記の力が作用した時に壁版や床版断面が持ちこたえるに必要な鉄筋が入っているかも検証します(応力の検討)。擁壁の各サイズをどのようにするかで、L型擁壁、T型擁壁、逆L型擁壁なんて表現しています。それぞれの形態に強みと弱みがありますので、敷地の条件や建物の配置計画によって検討すべきですね。

 

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 さて、上記の具体的な設計手法がお知りになりたい方は、行政が提供している擁壁標準構造図と設計例をご覧いただきたいと思います。

 

 ★横浜市の宅地造成の手引き

   http://www.city.yokohama.lg.jp/kenchiku/takuchi/takuchikikaku/takuzo/tebiki/

   (横浜市_擁壁の標準構造図は、手引きの資料編にあります)

 

 行政ごとで設計に求める要件が少し違ってくることもありますので、事前相談をご活用ください。

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