2018年4月19日 更新
事務所のチーフにプランを見てもらった由比ちゃん。そのことでプランニングで悩む毎日。そこで、さらにチーフから、追い打ちが?!
姉
あ、チーフ、おはようございます。。。
池田チーフ
おーおはよう吉阪君。きょうはいつにもなく元気、、、じゃないね(笑)
姉
あ、池田さん分かります?って、分かりますよね。前回のプランニングの添削で目一杯、赤ペンを頂きましたから!!
池田チーフ
そういえば、もう一つ、二つ気になったことがあるんだけどいいかい?
姉
えー朝からいきなりですか?!もうこれ以上ご勘弁をーーー
池田チーフ
いや、今回は、意匠上のことを確認しておきたくて。早速だが吉阪君、建物にとって大事な、広さのパラメータである延べ面積と建築面積が、敷地によって決まる「容積率」と「建蔽率」をちゃんと満足していることを確かめたかい?
姉
も、もちろんです!!いえ、、、すみません、まだ見ていません、ハハハ(笑)
池田チーフ
ちょうどいい、これから確認してみよう。
姉
ハイ。。。
…
池田チーフ
さて、まずは、容積率※1と建蔽率※2のおさらいからだ。吉阪君、簡単に説明してごらん。
姉
はい。容積率は、建築物の延べ面積の、敷地面積に占める割合のことで、建蔽率は建築物の建築面積の、敷地面積に占める割合のことです!
池田チーフ
パーフェクトだね。ちなみに、既にお分かりだと思うけど、延べ面積は、建築物の床面積の合計で、居室や寝室などの部屋の面積の合計の上限だね。建築面積は、建築物の外壁や柱の中心線で囲まれた部分の水平投影面積※3で、敷地内で建築物を建てられる範囲を示している。
姉
はい。容積率の最大値が大きければ、延べ面積が広くなって、床面積が広い建物が建てられますし、建蔽率の最大値が大きければ、敷地を広く使えます!趣味が多い私の家族にとっては、みんなの部屋を広く取りたいので、どちらも大きいのが理想ですが、建物の予算があるので(笑)
池田チーフ
贅沢だね(笑)。では、それぞれの上限はどうやって決めれば良いかな?
姉
まず容積率については、都市計画によって定められる容積率の限度以下で、かつ、前面道路幅員に応じて定める容積率の限度以下でなければ駄目ですね。
池田チーフ
その通り。「かつ」がミソだね。どちらか小さい方を採用することになる。あわせて、敷地がどれくらいの幅員の道路に接しているかも重要な要素ということになる。
姉
ええ。その道路幅員を決めるにも、幅員15m以上の特定道路が前面道路に接続しているときは公式があって、、、えーっと、助けて法令集!!(笑)
池田チーフ
あ、逃げた(笑)。ちなみに吉阪家が接する道路の最大幅員は何mだい?
姉
4mです。
池田チーフ
では、特定道路に関することは、今は置いておこう(笑)。緩和規定などもあるし、それはまたの機会にでも。
姉
はい(笑)
池田チーフ
質問を変えて、用途地域の区分は何だい?
姉
第1種低層住居専用地域です。
池田チーフ
敷地が2つ以上に渡ってる?
姉
いいえ。あ、確か敷地が2つ以上の用途地域に渡る時って、それぞれの容積率を適用するんですよね?
池田チーフ
そうだね。敷地が2以上の用途地域等に渡る場合は、それぞれの用途地域等の容積率の限度に敷地の各部分の面積を乗じて延べ面積を求めるんだ。
姉
落ち着いて求めれば間違えませんね。
池田チーフ
そうだね。さて、容積率はこの辺にして、続いて、建蔽率の上限はどうやってきめるのかな?
姉
えっと、商業地域外では、都市計画で決められた数値で、商業地域では8/10(80%)となってます。
池田チーフ
つまり、敷地面積の、たとえば8/10までを建築面積にすることができるということだ。さらに、角地や防火区域では緩和があるから、実際に敷地を見てチェックしよう。
…
姉
これが敷地を落とした図面です。(図1)
池田チーフ
吉阪家の敷地の条件は分かっているかい?
姉
インターネットで調べたところ、都市計画による指定建蔽率は5/10(50%)、指定容積率は10/10(100%)です。
池田チーフ
最近は、行政がHP上で情報を提供するシステムがあるから便利だね。よし、実際に延べ面積を求めていこう。
姉
そうですね。容積率は、「都市計画によって定められる容積率の限度以下」かつ「前面道路幅員に応じて定める容積率の限度以下」なので、前者は10/10。後者は、「道路幅員」×「用途地域ごとの係数」で決まるので、目の前の道路の最大幅員が4m、第一種低層住居専用地域は係数が4/10なので、4×4/10=16/10となります。
池田チーフ
ということは、それぞれの最小値だから、10/10と16/10と比べて、容積率の上限値は10/10、つまり100%となるね。
姉
はい。敷地面積が143.2㎡なので、延べ面積の上限は143.2*10/10=143.2㎡です。
池田チーフ
床面積の合計は何㎡だい?
姉
えっと、1階が67.08㎡、2階が33.12㎡なので、合計で100.2㎡です。143.2より小さいので、大丈夫です!!
池田チーフ
つまり、この建物の容積率は、100/143.2*100=69.97%、上限の100%以下なのでOK!ということだね。ちゃんと確認しておくこと!
姉
プランニングが楽しくてつい。。。
池田チーフ
まあいいでしょう。次!建蔽率。
姉
都市計画から5/10(50%)です。
池田チーフ
図面を見ると角地にあるね。特定行政庁が指定する街区の角にある敷地であれば、1/10(10%)追加できるけどどうかな?
姉
該当します。
池田チーフ
では、防火地域で防火建築物かな?
姉
準防火地域で、準耐火建築物の予定なので、該当しません!
池田チーフ
であると、5/10+1/10=6/10(60%)が建蔽率の上限になるね。
姉
はい。そうすると、建築面積の上限は、敷地面積×建蔽率で、143.2×6/10=85.9㎡となります。我が家の建築面積は67.07㎡だから、67.07/85.9*100=78.07%。あ、これも大丈夫です!!(笑)
池田チーフ
お客さんの設計でなくて良かったよ、本当に。でも、今回はすべての条件を満たしていたね。結果をまとめるとこうなるね。(図2、表1~3)
姉
私もたまにはやるんですよー。
池田チーフ
たまにはではなくて、毎回頼むよ(笑)。今回調べて分かったように、プランニングするうえで、敷地にどれくらいの広さの建物を建てられるかはとても重要なんだ。おそらくお父さんからもそんな話があったはずだと思うよ。
姉
あ、確か工務店の研吾おじさんにプランニングを見てもらった時に、その話題が出て、父が、敷地のことだろう?って、言ってました。なるほど!!
池田チーフ
では、最後に、何故、建蔽率と容積率を設けているか分かるかい?
姉
うーん、住民同士がケンカにならないためですか?
池田チーフ
そうだね。上限を設けないと、みんなが好き勝手に建ててしまう。そうすると、どんなことが起きるか。
姉
敷地の取り合いや、高さによる影の影響も出ます。火事などが起きた時も、防ぐのが難しくなります。大きな視点で言えば、街づくりが成り立たなくなってしまいます。
池田チーフ
そうだね。例えば、リゾート地などは、森林を保護するために容積率と建蔽率の上限をもっと厳しくして、自然と共存するような街づくりをしている。
姉
なるほど!都市計画も、プランニングと同様、ルールの上で成り立っているのですね。
池田チーフ
これで、吉阪君もプランニングについて、さらに理解を深めたようだね。しかし、今回はツッコミどころが少なくてチーフ的には不満なんだがなぁ。まあいいか(笑)
第6話「高さ制限って??」に続く
※1 建築基準法 第52条
「建築物の延べ面積の敷地面積に対する割合(以下「容積率」という)は、(以下略)」
で定められている。用途地域、前面道路、特定道路などの敷地条件を考慮して、上限値
を求める方法が明記されている。
※2 建築基準法 第53条
「建築物の建築面積の敷地面積に対する割合(以下建ぺい率)は、(以下略)」で定めら
れている。用途地域、角地、壁面線などの敷地条件を考慮して、上限値を求める方法が明
記されている。
※3 下図参照