2018年8月27日 更新
前回、池田チーフと、屋根や床をピザに例えた話で盛り上がった由比ちゃん。ピザの話はまだ続いているようです。
姉
池田チーフ!こんにちは!
池田チーフ
お、こんにちは。
姉
前回の話の続きして下さいよー。
池田チーフ
ピザの話だったかな?そういえば、駅前にオープンしたお店の窯焼きシラスピザが絶品だったんだが、由比君は行ってみたかい?あの塩味、病みつきになるよ。
姉
えー!!おいしそう―!!今度行きますね!って違います!お家の話です!床構面の話です。
池田チーフ
なんだ、そっちの話ね。
姉
んだじゃないですよー。前回、我が家のプランを変更したの覚えてますか?(プラン図1)こんな風に、吹き抜けも造りたいけど、床も強くしたい!そんな悩みを解決する方法はあるんですか??
池田チーフ
あぁ、大屋根タイプの家だね。(プラン図2)簡単だよ。吹抜けを小さくして床を追加すれば良いんだ。ピザの生地に穴が空いていたらどうなる?
姉
穴が広がって、最後はちぎれてしまいます。
池田チーフ
それを防ぐ為に、例えば、今回の場合であれば、こんな風に、壁に沿ってキャットウォークを設けてやることも一つの手段だね。(図1)
姉
インテリアにも使えそうですね。
池田チーフ
そうだね。こうやって床を設けることで、デッキ側の耐力壁を活かすことができる。先日も言ったように、床が剛であることで、耐力壁の剛性に応じて水平力を分配することができるからね。
姉
でも、これだと、せっかく屋根にトップライトを設けたのに暗くなりそうな気がします。
池田チーフ
それならば、屋根を強くするのも一つの手だね。屋根で剛床仕様で作ってしまう方法もある。
姉
床で屋根を作るんですか?!
池田チーフ
そうだよ。登り梁と厚い構造用合板を使って、床と同様な納まりを屋根にも設けてあげるんだ。(図2)
姉
小屋組の火打ち構面だけでは、耐力が足りないから、屋根も強くして、天井と屋根で水平力を伝達させるのですね。
池田チーフ
そうだね。こんな風に開口の横に設けてあげるのは手だね。
姉
なるほど!そうすると、吹き抜けを設けたい場合は、①キャットウォークなどを設けて水平力を伝達できるようにする、②屋根の剛性を強くして、床で伝達できない分を補う、という方法があるのですね。
池田チーフ
そうだね。他にも、床を張らずにブレースを設ける方法や、床の釘ピッチなどを変えて床の剛性を高める方法もあるけど、それは少し専門的になるから、今回は割愛するね。
姉
あ、あと気になるのは、スキップフロアの場合!これって、どうなるのでしょう。床はあるけど、段差になってしまいますよね?この場合はどのように判断すべきなんですか?
池田チーフ
ピザ生地!
姉
あ、ピザ生地で考えると、生地をこうやって段差にすると、、、段差が大きくなる程、ちぎれます(笑)
池田チーフ
それはどちらかというと重力の影響だね(笑)
姉
あ!チーフのいじわる。。。
池田チーフ
スキップフロアのように床に段差がある場合は、段差の高さで、構造的な見解は変わってくるんだ。例えば、①の場合(図3①)は、段差になっていても、段差が梁せい内で納まっているだろう。このように、大きな成の梁を使って段違いの床を支えるとか、段差を、たとえば合板で固めてしまって、連続性を持たせて、あたかも段差が無い、フラットな床の様にするとかね。そうだな、さっき想像した段差のある生地を、重力の影響は無視して、それぞれ別の方向に動かしてごらん。上の生地を手前に、下の生地を奥に動かしたら、斜めになってちぎれるだろう?
姉
なるほど!だから段差部分を固めるのですね。基本的には、床が力を伝達する機構、つまり、剛床もしくはそれに近い構造が成り立っていれば良いということは、例えば、②の様な納まりにすれば良いのではないでしょうか?(図3②)
池田チーフ
考えたね。実はこの納まり、つまり、梁成内に床の段差が納まっていない場合をスキップフロアというのだけど、この場合は、合板固めるだけでは不十分な場合があるんだ。スキップフロアは立面不整形といって、床の段差部は構造的に弱点となるから、構造計算を行って安全を確かめなければいけないんだ。
姉
段差を固めるだけではうまくいかないのですね。うーん、やっぱり、スキップフロアは一筋縄ではいかないのですね。
池田チーフ
そうだね。意匠的には、動きがあって見栄えのする構造だけど、構造力学に弱い箇所がある形状だけに、構造的に配慮した設計しなければならない。そしてそれは、みんなが出来るわけではなくて専門知識が必要になる。ここまで言えば分かるね?
姉
はい!こういう時こそ、私たち構造設計者の出番!ですね。私は、今は出来ないけど、実務を積んで、勉強して、スキップフロアの様な複雑な構造設計を行えるようになりたいです。
池田チーフ
うん。期待しているよ!ただし、忘れてはいけないのは、どんな時も、机上の空論であってはならないこと、だね。構造計算で求めた、必要な耐力ができるように、施工時に、確認することが大切だ。逆に言うと、施工できる技術の中で、構造計算の解を見つけなければならない。それは、床を増やすことかもしれないし、屋根の勾配を変えることかもしれない。誰もやったことのない方法かもしれない。施工できなければ、それは絵に描いた餅、だからね。意匠と、構造、そして施工のみんながタッグを組んで、解決する必要がある。おいしいピザだって、素材を作る人、生地を練る人、火力を調整する人、盛り付けをする人がいるだろ?役割分担して、美味しいものを届ける。それと同じだね。
姉
あれ、最終的にピザの話になってますけど。。。チーフ、お腹すいてきました!ピザ、行きましょう!!
※水平構面について、もっと知りたい方は、こちらへ
第9話「部材の検討、金物、接合部って?(仮)」に続く