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-第9話-「木構造の接合部を見てみよう!」

2018年9月19日 更新

ピザの話で建物の床構面の話が少し分かった由比ちゃんでしたが、弟の廣君に鋭い質問をされてしまい・・・。

池田さーん、助けてください!
池田チーフ
今日もいきなり元気に助けを求める由比君、おはよう。
弟に馬鹿にされました。
池田チーフ
まあ、想像できるよね(笑)
そうやってチーフもいじめるんですか!?いや、実はこんな話があったんですよー

 

 

                     ***

 

そういえば姉さん、ちょっと聞きたいことがあるんだけどいい?
え?いきなりどうしたの?

ははーん、さては好きな子でもできたのかね、弟君

なにそれ。いつの時代の切り返し方だよ。
まあまあ照れなくて良いのだよ。人生の先輩である姉さんが答えてあげよう!なんせ今の私に怖いものはないのだから!

 

知ってる??

世の中のことは、すべてピザに例えれば、解決するってこと!

・・・・・・ごめん姉さん。やっぱり聞く人、間違えた。
まあまあとりあえず、言ってみなよ
じゃあ、真面目に。木造の接合部ってどうなってるの?
うんうん、隣の逸子ちゃんがね、、、。ん?セツゴウブ??
そう。RC造の柱と梁の接合部は鉄筋コンクリートで一体化されてるし、鉄骨は、部材どうしを溶接して緊結してあるけど、そういえば、木造ってどうなってるのかなって。どうしたって、他構造に比べると弱い印象があるからさ。

最近姉さん、木造に大はまり中だし。

そ、そうね。ピザに例えるならそうだなあ、耳のところのチーズ??
いや、あえていうなら、それはRC梁の鉄筋でしょ。
じゃあ、どこだろう、、、生地かな。
姉さん、単にピザが食べたいだけじゃないの?分からないなら、事務所の池田さんに聞いてちゃんと教えてくれよな、姉さん。

 

 

 

                     ***

 

 

って、具合なんですよー。。。

本当にかわいくない!!

池田チーフ
弟君はちゃんと勉強しているね。彼の質問は、木造の接合部についてだね。

 

由比君は、軸組で家族の家を設計しているけど、どこを気にして設計してる?

えっと、これまでも話題にさせてもらっていた耐力壁と水平構面です。
池田チーフ
では、その耐力壁と水平構面が、持っている耐力を確保するためには、どのような状態が理想かな??
ずばり、耐力壁や構面が壊れない事です。
池田チーフ
では、耐力壁や構面は、どこに、どのように施工されてるかな??
耐力壁は、柱と梁、水平構面は梁です。どちらも釘や金物ですよね?
池田チーフ
そうだね。そこまで分かっているなら、どうして答えられなかったんだい?
いえ、、、どうしてもピザに例える事が出来なくて。。。
池田チーフ
・・・。弟があきれる訳だ。
でもそういわれると、確かに、現場を見た事がないので、具体的にどんな金物を使って、どんな納まりかわからないんです。
池田チーフ
お父さんの知り合いにどなたか工務店の方はいらっしゃらないの?
・・・あ!隆正さんがいた!!
池田チーフ
いるみたいだね。教えてもらうことが出来ればいいね。
今度の休日頼んでみます。

 

 

                     ***

隆正
久しぶり!由比ちゃん!
今日は突然済みません。こちら、事務所の上司の池田です。早速なのですが、木造の接合部について教えてほしいんです。
池田チーフ
突然お邪魔してすみません。
隆正
いえいえ、ようこそいらっしゃいました。では、さっそく。木造の接合部というのは、柱梁の接合部、柱の柱頭柱脚部が代表的だね。それぞれ、継ぎ手仕口、筋交い金物、柱頭柱脚金物、横架材金物などで、納めているんだ。たとえばこれは、継ぎ手・仕口 だよ。ほんの一部だけどね。

                           

 

こういった納まりで、柱と梁が繋がっているんですか?
隆正
そう。部材を長さ方向に接続する接合部を継ぎ手と言って、二つ以上の部材が、直角や、とある角度をもって結合する時、その結合部を仕口というんだ。
この、大入れあり掛けの場合、梁側を大きく削ってしまうんですね。
隆正
そうなんだ。断面が欠損してしまうだろう。だから、それを考慮して梁組を考えたりする場合もあるね。

 

あ、私も池田さんに聞きたいことがあります。構造計算上は、このような断面欠損はどうやって評価するのですか?

池田チーフ
計算ソフトによって異なるのですが、計算上、あらかじめ断面欠損の割合を断面性能に対する低減係数として、評価しています。

たとえば、梁の場合、一律30%低減とか、あるいは、この仕口の場合は、断面性能を0.6倍に低減、というようにです。

隆正
それを聞いて安心しました。では続いて、代表的な柱頭柱脚金物。これは、やっぱり馴染みがあるのは、なんと言ってもホールダウン金物ですかね。

 

       

 

 

耐力壁の足元にある金物ですね。土台を貫通して、基礎に直結してますね。土台ではダメなのですか?
隆正
ホールダウン金物は引き抜き力が大きい箇所に用いられることが多いため、土台に取り付けると、土台が先に壊れてしまうんだ。
池田チーフ
言い換えると、耐力壁が許容する耐力を発揮する前に金物が先行破壊してしまうことを避けるために、基礎に直結させてる、ということになる。
そっか、耐力壁も水平構面も、金物が壊れたら、力を発揮できないですもんね。
隆正
もちろん、柱と土台を接続する金物もあるよ。代表的なもので、角金物と言って、比較的引き抜き力耐力が小さい金物が多かったんだけど、最近では、ホールダウン金物に匹敵する耐力を持つ製品もあるね。

ただし、先ほど池田さんが仰ってたように、土台が先行破壊しないことを確認してから使用しなければいけないことを忘れずにね。

 

 

 

はい!
池田チーフ
由比君、実はこのホールダウン金物、耐力壁の足元に使うだけではないことを知ってるかい?君の大好きなピザがヒントだね。
えっ?!しらすピザ・・・じゃなくて、水平構面に、ですか??
池田チーフ
そう。これまで特に触れなかったけど、水平構面の端部には引張り力が加わるんだ。その引張り力に抵抗するのが、引っ張り金物で、ホールダウン金物も、それの一部なんだ。
水平構面に引っ張り力?!うーん、何が起きてるんだろう。そんな時は、ピザピザピザ(笑)。

 

・・・・・・耐力壁の上にピザの生地が載っていて、建物に水平力が働いたとき、ピザ(床)を通じて耐力壁に力を伝達させます。剛床の場合、床の変形はどの点でも同じだから、耐力壁の耐力が高かったり、数が少なくて間隔が広かったりすると、その分、変形を抑えるために、床が踏ん張らなくてはいけないんですよね。

池田チーフ
いいね。床の外周部、ピザの耳の部分には、どんな力がかかるかな?
耳のところ、って、チーズが入っているところですよね。えっと、生地は外側に広がろうとしているので、引っ張られます。

 

・・・あ!

チーズが伸びちゃう!ということは、それ防ぐ為に引っ張ってあげる必要があります!

池田チーフ
そう、正解。
やっぱりチーズところじゃん、廣!
池田チーフ
ん?どうした?
いえ、なんでもありません(笑) 縦にも横にも、引張り力が働く箇所に使えるんですね。なるほどー。耐力壁と水平構面の両方に対して、重要な役割をするホールダウン金物。木構造の重要なキーアイテムですね。
隆正
どうだい、由比ちゃん、今日はいろいろと収穫があったんじゃないかな。
ありがとうございました。また、教えてください!

 

 

                     ***

 

・・・ってな具合で、ホールダウン金物はピザの粘り強さには欠かせないアイテムなのよー!
結局ピザかよ。でも、木造の接合部のこと、良く分かったよ。ありがとう。今度、ピザでも奢ろうか?姉さん。
お、たまには嬉しいことを言ってくれるじゃない!そうそう、ちゃんと本当の悩みにも乗ってあげるからさ。
またその話かよ。姉さんこそ、建築とピザに恋してるばっかりじゃなくて、人間をみてくださいな。
こらー!!それは余計な御世話だ!!

 

 第10話「縁の下の力持ち、基礎(仮)」に続く 

 

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