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-第12話-「柱や梁の断面はどうやって決まるの?」

2018年12月20日 更新

 前回はたらふくピザを食べながら基礎の構造計算を勉強した由比ちゃん。今回は軸組工法の大事な部材、柱と梁の構造計算のお話です。 

 

チーフおはようございます!先日はピザのごちそうありがとうございました。
池田チーフ
どういたしまして。基礎の勉強にもなったし、お腹も膨れたし、大満足だったんじゃないかな。私の財布は、だいぶ痩せてしまったけどね。。。
またまたー!課外授業ならばいつでも行きますからね。
池田チーフ
たまにしてくれよ。お、今日は図面を引いているのかな?
そうなんです。新しいお家の構造図を書いてみなさいと先輩に言われまして。
池田チーフ
へーそれは気になる。ちょっと見てもいいかな。
どうぞ!あ、あまりツッコまないでくださいね。
池田チーフ
分かったわかった。・・・この吹き抜けの中央にある柱の大きさはいくつかい?
この柱ですね。えっと、たしか105角です。海外の教会のように屋根を柱で受けようかなーなんて思いまして。
池田チーフ
また想定外の事をしているね(笑)。面白いけど、その柱の高さはいくつだい?
2階より高いので、6m以上ありますね。
池田チーフ
それは少し高すぎるね。座屈しないか、確認しないといけないよ。
座屈ですか?
池田チーフ
あと、気になるのは、リビングの真中にあるこの柱。床を負担する面積が大きいね。
いわゆる大黒柱!を作ろうと思いまして。
池田チーフ
なるほどね。で、その大黒柱はどれくらいの太さなの?
これも105です。
池田チーフ
それはちょっと頼りないなぁ。その大黒柱に繋がるこの梁はスパンが大きいね。
家族みんなの団欒の場を作りたかったんです。
池田チーフ
そうすると、梁せいの大きな部材を使ったほうがいいね。
どうやってサイズは決めた方がいいのですか??
池田チーフ
柱の場合も、梁の場合も、サイズを決めるうえで、ある程度の目安を決める規定があるんだ。構造計算をすれば、経済的に設計できるけど、その前に、由比くんは柱と梁にはどんな力が働くかを、簡単にどのような検討をしなければならないかを確認する必要があるね。
あー、またいつもの間にかチーフのペースになってる。。。

 

 

* * *

 

池田チーフ
さっそく柱からみていこうか。由比君、プラスチックの幅の薄い定規を持っているかい?
要求が細かいですね(笑)。持ってます。
池田チーフ
では、それを柱と見立てよう。掌の上に載せて、上と下から力を加えるとどうなる?力の入れすぎに注意してね。折れちゃうから(笑)
そんな器用なことできませんよーこうですか。あ、曲がって、厚さ方向に膨らみますね。
池田チーフ
そうだね。これがさっき話した座屈だ。
これが座屈なんですね。柱の長さが長いほど、座屈しやすくなりますね。
池田チーフ
そう。では今度は、定規を横にして、例えば、本と本の間においてごらん。これを梁と見立てよう。上から、ひと指し指で力を加えるとどうなる?
下に曲がります。
池田チーフ
そうだね。この二つの現象で、もう由比君は、柱と梁にはどんな力を加えると、どんな風に動きをするか分かったと思うよ。
たったこれだけですか??
池田チーフ
基本的な働きは、ね。まず、柱というのは、上から力を受けて下の部材に流すための材。掌で押した力が上からの力だ。上からの力は梁からの力。そして、梁は、その柱を受けたり、床の荷重を受けたりする部材だね。柱から受けた力は、さっき指先で押した力のことだね。
ということは、基本的には、今見たような柱と梁の力のやり取りで建物が成り立っているわけですね。
池田チーフ
そうだね。構造は重力との戦いだと前に言ったことがあったけど、柱と梁を組み合わせて、いかに安全に地面まで力を流してあげるかが、構造設計者の腕の見せ所なんだ。
柱は大きな力を受けすぎると座屈を起こして、梁も床の負担が大きかったり、柱を何本も受けると曲がってしまいますよね。そのために両方とも大きなサイズの断面が必要になるのですね。
池田チーフ
そうだね。
ということは、さっきの柱と梁は、断面のサイズが全然足りない気がします・・・。
池田チーフ
うん。その感覚が大事だ。図面を書いている時や計算をしている時に、常にその感覚と向き合いながら設計することが大事だね。
はい!
池田チーフ
それじゃあ次に進もう。どうやって、目安のサイズを決めるかというと、構造計算をして決定するのが最適なのだけど、柱の場合は、建築基準法施行令43条「柱の小径」に規定されている(※1)。
法令集で確認してみます。43条には小径の話と通し柱の話、細長比の話が載ってますね。
池田チーフ
そうだね。第1項に屋根の重さと建物のどの階の柱かによって、柱の高さの何割が小径に必要かが決められる表が載っているだろう(※2)。そして、第6号の細長比が、さっきの座屈に関係するんだ。そこを読んでごらん。
えっと、「柱の有効細長比は150以下としなければならない。」とあります。何のことでしょうか??
池田チーフ
うん。簡単に言うと細長比は、断面のサイズと柱の長さで決まるんだ。長すぎたり、柱の断面が小さすぎるとこの規定から外れてしまう。後で実際に計算してみて欲しいのだけど、有効細長比=150から逆算してみると分かるけど、例えば、105角の柱は、横架材間距離が4.546m以下、120角は5.196m以下である必要があるんだ。
ということは、さっきチーフが見ていた吹き抜けのところは、6mもあるので、120角以上の小径が必要になりますね。。。
池田チーフ
そうだね。柱のサイズを大きくするか、または、横架材間距離を小さくしなければならない。どうだい、感覚を掴めたかい?
掴めました!
池田チーフ
じゃあ続いて梁だけど、同82条第4号に基づき、告示1459号に梁成の規制値が定められているんだ。ここには、梁せいが梁の有効長さの1/12であること、とある(※3)。これがさっき話した、ある程度の基準だ。
なるほどー!!こうやって大体のサイズが分かるんですね。
池田チーフ
うん。そうだね。その場所においてどんな力が働いているかを見抜いて、最適なサイズを設計して当てはめてあげる。これを繰り返して、柱と梁で架構というもの作ってあげる。そうやって木造の建物は成り立っているんだ。他の構造でもそうだけど、まさに適材適所で成立しているんだ。構造設計って面白いだろう。
力の流れを理解して、一つ一つ見ていく必要がありますね。まだ難しいですけど、少しづつ視界が広がっていくのは面白いです。
池田チーフ
そうだね。ちゃんとできるようになるよ。ところで、さっきの大黒柱だけど、荷重をたくさん受ける以外の理由でも太くしなければいけないんだけど分かるかい?
うーん何でしょう。見た目?ですか。
池田チーフ
確かに見た目も太くないと頼りないけどね(笑)。あの柱は4方から梁を受けていただろう。そうなるとその接合部はどうなってる?
あ、前に接合部の話出てきましたよね。4方向から梁がぶつかると、その接合部の分、柱が削られてしまいます。
池田チーフ
そうなんだ。柱断面が実はほとんどなくなってしまうんだ。これを断面欠損という。
断面欠損ですね。もう柱の中心部周辺にしか断面が残らないのではないでしょうか?
池田チーフ
だから、設計するときは、断面欠損を考慮して計算する必要があるね。そして、おなじことは梁にも言える。梁はどこに欠損があったら不利だと思う?
さっき定規が曲がった時、下側に曲がっていたので、下側だと思います。
池田チーフ
そうだね。下側は引っ張られていて、上は圧縮されている。そんな時、下側のはりの欠損があったら、そこから割れてしまうだろう。
部材にどんな力が働いているかがイメージできれば、不要な欠損は避けられそうですけど、難しいのでしょうか?
池田チーフ
現場で不用意に欠いてしまったり、配管の計画上、欠かなければいけない場合もあるから、構造計算の段階で完全に防ぐことは難しいね。
意匠設計の方、工務店の方やプレカット業者の方と連携して、進めなければいけませんね。
池田チーフ
うん、その通り。今日は、食べ物の話が出なかったけれど、良く理解してたみたいだね。これまでの話、どうだった?
今まで構造に関して、耐力壁、水平構面、接合部、基礎とみてきて、今日は柱と梁。意匠に関しても、高さや面積など。いろんな要素で建物は成り立ってることが良く分かりました。
池田チーフ
さて、これまでのことをひっくるめて、由比君の家づくりがどうなるか楽しみだね。
みんなの意見まとめるの大変だなあ(笑)。でも頑張ります!!

 

 

※1 第43条の詳細な解説はこちら

※2 下表が由比ちゃんが見ていた表。

 

         

 

※3 建設省告示1459号 「建築物の使用上の支障が起こらないことを確かめる必要がある場合及びその確認方法を定める件」
 当告示の第1項に、『建築基準法施行令 第八十二条第四号に規定する使用上の支障が起こらないことを検証することが必要な場合は、建築物の部分に応じて次の表に掲げる条件式を満たす場合以外の場合とする。』とあり、木造の場合は、1/12である場合は、使用上の支障をおこす「たわみ」の検討が省かれることから、梁せいの規制値としている。

 

     

 

 

第13話「いよいよ大詰め?由比ちゃんのプラン作り(仮)」に続く

 

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