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-最終話-ついにお披露目!由比ちゃん設計の新しい吉阪家!後編(-構造-)

2019年3月22日 更新

 前回は新しい吉阪家の意匠についてチーフとお話していた由比ちゃん。続いて、構造についてのお話です。

池田チーフ
さて、次は構造についてみてみよう。まずはさっきも話に出ていた壁量からだね。結構前の話になるね。
46条の壁量の話ですね(第4話)。これが計算結果です(図1-①)。このシートは構造計算結果の概要を表しています。ネタ晴らしになってしまうので他のところは見ないでくださいねー(笑)。説明は追い追いします!

 

図1 構造計算結果概要シート

 

池田チーフ
分かった分かった(笑)。まずは46条のところだけ見るよ。この表はどんな風に見れば良いのかな?
46条における必要壁量と建物の存在壁量が明記されています。この数値だけですと分かりにくいので、検定値という表現を追記してみました。構造計算書ではこの表現が多いですよね?
池田チーフ
そうだね。数値を数値のままで比べるよりも、検定値という表現にしたほうが、どの程度余裕があるか確認するのにとても便利なんだ。数値の範囲は0.0~1.0で0.0に近い程余裕があり、1.0に近づくほど余裕がないことを表している。
ええ。
池田チーフ
ただし、余裕があるというのは、設計者の判断だから、必要数値以上だから必ずしも余裕があると一般的には言えないところに注意しなければいけないね。
そこが、その建物に対する設計者の方針でもありますもんね。
池田チーフ
そうだね。建物のどこに余裕を持たせる設計にするのか。これも構造計画の一部だね。今回は、どうかな?充分余裕があると言えるかな?それともギリギリかな?
充分です。
池田チーフ
そうだ、由比くんの家は、耐震等級を取りたいって言っていたよね?
はい!なので、耐震等級3、耐風等級2で計画しました。
池田チーフ
よし、次はその結果も見ていこう。
それは、さっきのシートの②です(図1-②)。検定比を見ると、46条の壁量に比べて余裕は無いですが、等級3の必要壁量は満足していますね。
池田チーフ
建築基準法で求められる1.5倍の壁量だね。46条の時から、どれくらい増えたのかな?
図面で見ると分かりやすいので、これを見てください(図2)。この部分の耐力壁を追加しました。1.5倍と数値で言われるとピンと来ませんが、実際の耐力壁の枚数としては、3か所、筋交いが増えてます。

 

 

 

池田チーフ
なるほど。さっきの表を見ると、地震力ではなくて風圧力で耐力壁の量が決まっているんだね。地震力の方はある程度余裕があったから、増えた枚数の原因は風圧力なんだね。屋根の形状が片流れだからだね。でも、結果的にどちらとしても、ブランが変更になるようなことにならなくて良かったね。耐力壁のバランスはどうだい?
46条の壁量を確認した時は、壁のバランスということで4分割法で確認しましたけど、今回は構造計算を行ったので偏心率で、バランスを確認しました。これもさっきのシートに載っています(図1-③)。規定値は0.3ですよね?
池田チーフ
そうだね。数値を見てみても、バランスも問題なさそうだね。木造は0.3以下であることが求められている。その中で、いくつを目指すか、これも設計判断によるところが大きいね。ただ一つ言えるのが、偏心率、つまり耐力壁のバランスが良いと、自ずと経済設計になる。
それは何故ですか?
池田チーフ
そもそも偏心率が悪いのは、大体において耐力壁の配置が悪いからなんだ。意匠のプランニングの時点で、構造設計のことを考えていれば、バランスの良い壁位置になる。でも、そうでない場合は、壁が偏ったり、全面開口になったりと、構造的に負担が大きくなる。そんな状態で計算しても、数値は悪くなるよね。
建物全体の壁量は満足しているのに、バランスを保つために余計に耐力壁を追加して、プランを変更せざるを得なくなってしまいます・・・。
池田チーフ
そうだね。結局、意匠的にも構造的にも得はしないんだ。だから、意匠プランニングの時点で、構造が入って設計することが大切だね。仕事の流れ上、うまくいかない場合が多いのはわかるけれどね。
難しいですね、設計って。でも、だからこそ、やりがいがあるってもんです!
池田チーフ
いいね!では、続いて水平構面だ。ピザを使って床や屋根の剛性について考えたけど(第7話第8話)、今回のプランでは吹き抜け、トップライトを設けていたけれど、結果的にどうなったのかな?
結論から言うと、なんとかなりました(笑)。屋根・小屋と床構面の図面です(図3・4)。やはり、小屋部分に十分な耐力がある、構造用合板24mmを貼れたのが大きいです。

 

 

           

 

 

池田チーフ
屋根については、どう計算したんだい?
トップライト部分の構面は、カウントしないことにしました!
池田チーフ
つまり、荷重のみ考慮して、屋根構面の耐力としては算入しなかった、ということだね。
そうです。無しでも、トップライト以外の屋根構面で、充分でした。
池田チーフ
小屋裏収納もあるし、その部分にも構造用合板24mmを貼れたのは大きいね。
ええ。今回、吹き抜けと、トップライトを作ってみましたが、耐力壁の配置や構面の作り方で、成立することがわかり自信がつきました!無闇やたらに吹き抜けなどの開口を設けることはせずに、建物にどのような力が働くから、その分をどこで補うかを考えられたと思います。
池田チーフ
そうだね、あれだけピザを食べながら勉強したもんね。
合言葉は「ピザ」ですよね!
池田チーフ
そう、ピザ様様だ。こうなったら竣工祝いはピザパーティだな!
チーフ、気がはやいです!
池田チーフ
そうだったね。まだ確認しなければいけないことがあるね(笑)。接合部の話をした時(第9話)に、水平構面の端部に引っ張り力が生じる話をしたよね?今回のプランでは、金物が必要になったかい?
いいえ、通常の継ぎ手の納まりで問題ありませんでした(図1-④)
池田チーフ
ホールダウン金物の横使いが見られないのは残念だけど、強い引っ張り力が掛からなくてよかったね。さて、基礎にいこうか。地耐力はいくつ必要になったかい?
25kN/m2になりました。
池田チーフ
ハイヒールで踏まれるよりも、痛くない重さだね(笑)
そういえば、その話(第10話)、なんか私にはハイヒールは似合わないって話で終わったような気がするんですけど!!
池田チーフ
あれ??そうだったっけ??まあ、いいや。金物はどうだい?
チーフの得意技、おとぼけが出ましたね。もう!・・・ホールダウン金物が結構出ています。
池田チーフ
そうだね。計算で出てきた結果だけでなく、引き抜き力に注意してね
と言いますと?
池田チーフ
ホールダウン金物を使用する目安として、引き抜き力が10kNを超えたら、基礎に緊結した金物、つまりホールダウン金物を使用すべきだね。どうしてか分かるかい?
10kNですか?これまでにその話ありましたっけ・・・うーん・・・
池田チーフ
土台の先行破壊を思い出してごらん。
ピザ・・・じゃなくて、耐力壁の耐力が発揮されるまでは土台が壊れてはいけない・・・。つまり10kN程度までは、引き抜きがあっても土台は壊れないと考えているからですね。
池田チーフ
そうだね。あくまで、計算上の確認だけど。
あとでもう一度見直して、数値によっては、ホールダウン金物に置き換えるようにします!
池田チーフ
うん。それがいいよ。さて、最後は部材のサイズを見てみようか。梁せいが大きくなる箇所はあったかい?
2階の床伏図(図5)を見てください。そこまで厳しくなるような箇所はありませんでしたが、1階に大きな開口部がある箇所と、2階の柱、特に耐力壁の端部の柱が載る梁は、安全を考慮して梁成を大きくしたり、集成材を使用しました。梁せいのサイズに関しては、柱間隔を考えながらプランニングできていたから、無理のない範囲に収まったかなと思いますがいかがでしょうか?

 

             

 

池田チーフ
そうだね。南側の開口は、スパンが飛んでいるし、耐力壁も載っているから大きくなると思っていたかな。由比君の言う通り、プランの時に、考えられていたからこそだね。一緒に勉強してきたかいがあったね。
チーフのおかげです。検討している時も、チーフとみてきた話が浮かんできて、構造計算するにあたって、より力の流れや考慮しなければいけないポイントが分かりやすかったです。
池田チーフ
うん、いい流れだね。これからもたくさん経験を積んで、住み手を考えた構造設計をしてほしいな。吉阪家の新居の相談を受ける楽しみが無くなってしまうのはさみしいけれど、これからもよろしく!あ、そうそう竣工パーティ呼んでくれよな!
もちろん、そのつもりです。

 

 

—数ヶ月後。

 

・・・という感じで、在来軸組工法で、こんな動きのある建物にしてみました♫ どうかな?忠雄くん?
忠雄
素敵ですね。由比さんのことなので、平面的にも立面的にも、どこかに遊びの要素を入れてくると思っていたので。素敵です。あ、とうさん!
一男
久しぶり、ゆいちゃん、おうち見せてもらったよー!あ、ピザもうまいね。
ありがとうございます。対抗したわけでは無いですが、在来ですよー!
一男
いやーいいね!うちのツーバイフォーにも負けないくらいの良い家を作ったねー!
ありがとうございます。それもこれも工務店のおじさんのおかげです。ね、隆正おじさん。
隆正
良い計画と図書があれば、現場も混乱せずに仕事ができるってもんだよ。由比ちゃんの設計のおかげさ。改めておめでとう。
一男
じゃあ、今度うちの別荘でも作ってもらおうかな。そこなら、由比ちゃんの監視の目が届かないから、ゆっくり飲めるぞ、研吾!
またそういうことを(笑)。相変わらずだなぁ、でもいいね、それ。隆正、頼むよ(笑)
こら、お父さん!!家が出来たからって調子に乗らない!もうほんとみんなをまとめるの大変だったんだから・・・(笑)
そんなこと言って、姉さんもだいぶ楽しんでたじゃない。チーフとのピザ密会。
密会って。まったくどこで覚えてきたのよ、そんな言葉。密会じゃなくて、作戦会議!
池田チーフ
・・・えーっと、でるタイミングまちがえたかな?その密会相手の池田です。どうも吉阪家とご友人の方々の皆様、はじめまして。あ、由比君、このピザ美味しいよ。
あ!チーフ!
由比の母の檀です。由比が大変お世話になっております。事務所でのお世話係、大変でしょう?
池田チーフ
とんでもない。楽しくピザを食べていただけですから(笑)
ほらね(笑)
チーフ!
池田チーフ
おっと、これは失礼。でも、僕は助言をしていただけですよ。これは、由比君の頑張りの結果ですね。プランニングから計算まで。意匠・構造を並行して設計することで、バランスの良い、無理のない設計に仕上がったと思います。もちろん、そのあとの施工もそうですし、ご家族や友人のサポートあっての新居だと思います。
そういわれると、これまで娘を育ててきた苦労も報われます・・・ううう涙。
え、父さん、そこ泣くとこ??酔ってるね。っていうか、苦労って何よー!
まあまあ。父さん、由比がやるっていうからあまり表に出なかったけど、やっぱり由比に苦労を掛けてるって、心配してたのよ。
父さんが家を建てたいって夢、応援したくて、私が走り過ぎてた気もするけど(笑)。・・・って、なんだか湿っぽい話になってきちゃたから、気を取り直して・・・。さ!これからも、たくさんの笑顔に会えるように、精進していきますので!

 

チーフ、これからもよろしくお願いします。

池田チーフ
こちらこそよろしく。
                                                                      新入社員 吉阪由比の住宅設計奮闘記 -完-

 

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